かわのほとりのオープンカフェ りにゅーある | とってもきまぐれなオリジナル漫画。とっても素敵な不定期更新(^-^;

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Posted by OKさんたろう on  | 

初めて手を握った日 最終話

最終話


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もう退院できないかもしれない。

状況はかなり厳しい。

そんな噂が耳に入って来るようになった。

やはりこのままではいけない。

伝えることは伝えたい。

そんな漠然とした思いを胸にいつしか私の足は病院の方向へ。

重い足取りで階段を上る。

病室の前で立ち止まる。

彼女の母親に促されて病室に入る。

個室の奥のベットに寝ている姿が見えた。

少し開かれたカーテンから陽の光が射しこんでいた。

さながら中世の宗教画のような神々しさがそこにあった。

回り込んで頭部のところにある椅子に座る。

彼女の胸に自分の影が投影される。

しばし耳を澄ませば、聖母マリアの声が聞こえてきそうであった。

最終話挿絵250

酸素マスクを装着され自ら話すことはできない。

いや、マスクを付けていなくても言葉を発する体力は残っていな
いのだろう。

目を開けて頷くいている。

有難うということなのか・・・

「久し振り、元気?」

なにをバカなことを言っているんだ。

うろたえながら気持ちを落ち着かせる。

「そうそう、今度退院したら今度はディズニーランドに行くんだろ」

などと一方的に話す。

こちらに向けた目を細めてなにか言いたげである。

笑いかけているように見えたので、こちらも笑顔で返す。

彼女の手が何かを指さしている。

そこには平仮名のボードがあった。

すかさずボードを手に取り、彼女の目の前へ。

指がボードの文字を指す。

「わ」


「た」


「し」


「も」


「う」


「だ」


思わず手を握りしめ、最後の一文字を拒んだ。

最後の一文字はもう分かっている。

分かっているけど今ここで、この目で確認したくはない。

そのとき気が付いた。

自分は彼女の手を生まれて初めて握っている。

幼少の頃からあれだけ一緒に過ごし、遊んだ仲なのに。

たった今、自分は彼女の手を生まれて初めて握っているのだ。

温もりと鼓動を感じている。

もう言葉は出てこない。

およそニ~三分間だったか。

真っ白な時間がゆっくり流れていく。

時計の音だけがカチカチと聞こえてくる。

枕元の目覚まし時計。

今この時間は現実なのだとカチカチと秒針を動かしている。

彼女の手の力が抜けていく。

「ごめん疲れたね」

いや、もっと言いたいことがあるんだ。

それが何なのか自分でもよくわからないけれど。

思いの全てをぶちまけに来たんだろう。

しかし、病室の白い壁は人を冷静にさせる力があるようだ。

こんな状況で訳の分からないことを言われたら混乱してしまう。

もうその混乱を自分で処理することはできないのだ。

そんな時間を過ごさせてはいけない。

そもそもこれは現実なのか。

こんなに美しい時間が存在するものか。

これは白昼夢のようなもので自分の深層心理が現実と絡み合い、
ドラマ仕立てで脳内に映像が流れているだけなのだ。

不思議と心底そう思えたのである。

気がつくと病室を出ていた。

扉の外にいた彼女の母親に会釈をする。

目頭を押さえているように見えた。

失礼とは思ったが、無言で立ち去る。

夢遊病者のようにふらふらと駐車場へ向かう。

振り向いて病室の窓を伺う。

もうそこには何も無い。




そこで記憶が途切れている。

いや、途切れているのではないのかもしれない。

あれからどれほどの時間が流れていったのか。

もちろんこの話はお察しの通りノンフィクションです。

でも彼女がどこに居て何をしているのか・・・分かりません。

時折夢に出てきます。

元気な笑顔で笑いかけます。

でもそれだけなんです。

あの瞬間に現実の彼女と決別したからです。

一通り参加せねばならない事には参加したと思います。

でもその後は一切会ってはいないのです。

会ってはいないという言葉が正しいのかどうかわかりませんが。

もう既に三十数年が過ぎようとしているのに。






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